2008年5月8日木曜日

『まぐれ 投資家はなぜ,運を実力と勘違いするのか』(ナシーム・ニコラス・タレブ)



全米で話題騒然のベストセラーの邦訳、ファイナンシャル・タイムズ紙の「年間ビジネス書No.1」受賞,フォーチュン誌で「史上最高の知的な書」選出など,世界の一流紙が絶賛した本である、とのこと(帯)。勝間和代センセーもどこかで推薦しておられた。これは読まねばなりませんよ。


まぐれ—投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのかまぐれ—投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか
ナシーム・ニコラス・タレブ 望月 衛

ダイヤモンド社 2008-02-01
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平易で洒脱な文章にして、書いていることは実に奥が深い。散人は本を読むのは速い方で普通はこの程度のページ数の本なら一日で読むが,まるまる一週間かかった。一章読むごとに本を閉じて考え込んでしまうことの連続だったから。

著者は中東で200年続いた裕福な有閑階級の出身。歴史の翻弄され家族は財産を失い、著者はアメリカで数学者になるが(やはりお金が欲しかったのか)ウォール街でトレーダーの道にはまり込んでしまう。ほとんどの同僚トレーダーが華々しく「吹っ飛ぶ」のを見ながら、不確実性を逆に利用して20年間もトレーダーとして行きのびている。彼個人と一族の経験から「不確実性」こそが歴史と社会と人類の進化の実態だと喝破する。非常に説得力がある。ユリウス・カイセルも「たまたま」運が良かっただけかもしれない。アレキサンダー大王もしかり。

非常に「インテレクチュアル」で,且つ「インテリジェント」な書物。それでいて世俗的な「本音」の書物。読んでいると自分の浅学さが恥ずかしくなる。

引用されている本は,殆どが自然科学関係の本か(例えば『利己的な遺伝子』 など)ギリシャの詩なんかだが、財テク関係書ではコツコツ蓄財こそが億万長者への道とする『となりの億万長者』 を数学的にぼろくそにけなしている。ハハハ。ちなみに著者はウォーレン・バフェットみたいにお金があるくせに質素な生活を送るのなら民生委員になった方がましと豪語する人。ポリティカリーにはコレクトではない。

2001年からアメリカでベストセラーを続けている本なのに,日本ではようやく今年になって翻訳が出版された。このへんに日米「マネー文化」の違いが見られるようで面白い。


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